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安藤医院便り(コラム)
新型インフルエンザへの対応は?
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

新型インフルエンザへの対応は?
 インフルエンザとはウイルスによる感染症のひとつで、A型・B型・C型の大きく3つに分かれます。なかでもA型はウイルスの大きな変異をきたすため、世界的大流行(パンデミック)を起こすといわれています。
 通常、12〜3月に流行しているインフルエンザを「季節性インフルエンザ」といいます。季節性インフルエンザは、主にA型とB型のウイルスによって引き起こされます。
 一方、ウイルスが変異して、新たに人への感染能力をもち、さらに人から人へと感染するようになったインフルエンザを「新型インフルエンザ」といいます。主に、変異したA型ウイルスによって引き起こされ、流行がおさまると季節性インフルエンザのひとつになっていく傾向にあります。
 現在、世界的大流行を起こしている新型インフルエンザは、2009年4月、メキシコにおいて、初めて発生が確認されました。豚から人に感染し、やがて人から人へと広まったとの説から、発生当初は「豚インフルエンザ」とも呼ばれていました。現在では「パンデミック(H1N1)2009」という正式名称がつけられています。
 新型インフルエンザは、ほとんどの人がウイルスに対する免疫をもっていないため、誰もが感染する可能性のある病気です。しかし季節性インフルエンザとの共通点も多く、ワクチンで感染を未然に防いだり、早期に適切な治療を受けることにより重症化を防いだりすることも可能です。
 大流行しているからといって慌てず、正しい知識を身に付けて、冷静な対応がとれるよう心掛けましょう。また、感染が疑われる場合には、早めに医師に電話で相談しましょう。

感染経路は?
 感染経路には飛沫感染と接触感染があります。前者は、感染者の咳やくしゃみから放出されたウイルスを吸い込んで起こる感染をいい、後者は、ウイルスが付着したものに触れた手で眼や鼻、口などにさわり、その粘膜からウイルスが侵入して起こる感染をいいます。

症状は?
 季節性インフルエンザとほぼ同様で、38℃以上の発熱、鼻汁や鼻詰まり、喉の痛みや咳などがみられます。小児ではインフルエンザ脳症(※)が見受けられる場合もあります。今回の新型インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて感染力が強いといわれていますが、軽症のまま回復することが多いようです。また、ウイルスの潜伏期間は1〜7日間といわれています。
 次に該当する場合は、肺炎を併発するなど重症化しやすいといわれているため、特に注意する必要があります。

【新型インフルエンザが重症化しやすい場合】
乳幼児
妊婦
高齢者
慢性呼吸器疾患(気管支喘息、慢性気管支炎など)のある人
慢性心疾患(うっ血性心不全など)のある人
代謝性疾患(糖尿病など)のある人
腎機能障害(慢性腎不全など)のある人
免疫が低下している人(ステロイドの全身投与を受けているなど)
インフルエンザ脳症・・・5歳以下での発症が多い。ウイルス感染による発熱後に、痙攣(けいれん)や意識障害、異常行動などがみられる。

検査と診断
 まず、問診を行います。問診では、発熱の有無や症状の現れた時期などについて質問されます。また、迅速診断キット(※1)により診断する場合もあります。より詳しくは、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction/逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)(※2)による検査もありますが、一般的にはほとんど行われません。
 現在では、原則としてすべての一般医療機関を受診することが可能です。しかし、産科、透析またはがん専門の病院など、新型インフルエンザの診療を行わない医療機関もあるため、まずはかかりつけ医に電話で相談しましょう。特に、妊産婦や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患をもつ患者さんは、事前にかかりつけ医と相談して、感染の疑いがある場合の受診機関を決めておきましょう。かかりつけ医をもたない場合には、一般医療機関に電話し、受診の可否を確認しましょう。そのほか、各都道府県の保健所などに設置されている発熱相談センターでも、電話による情報提供を行っています。感染拡大につながる恐れもあるため、事前に連絡をせず受診するのは禁物です。また、感染が疑われる場合には、待合室や入り口、診療時間がほかの患者さんと異なることもあるため、受診前に必ず確認しましょう。さらに、受診の際には不織布製のマスクを着用し、電車やバスなどの公共機関の利用をできるだけ避けましょう。
※1 迅速診断キット・・・細いめん棒や吸引器を使用して鼻や喉から粘膜を採取し、
ウイルス感染の有無を調べる。
※2 RT-PCR・・・特定の遺伝子を増幅して検出し、感染したウイルスの種類を調べる検査。

治療法は?
 主に、抗インフルエンザウイルス薬を用いた薬物療法を行います。そのなかでも、ノイラミニダーゼ(※1)の働きを阻害するザナミビル水和物とオセルタミビルリン酸塩を使用します。どちらも発症してから2日(48時間)以内に投与を開始する必要があります。それ以上経過した場合には、投与しても十分な効果は期待できないため、解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬などを用いる対症療法が中心となります。
 では、抗インフルエンザウイルス薬の概要についてみていきましょう。

【抗インフルエンザウイルス薬の概要】
薬剤名 ザナミビル水和物 オセルタミビルリン酸塩
剤形 吸入薬 経口薬
主な副作用 下痢・発疹・吐き気・
アナフィラキシーショック(※2)・
呼吸困難・気管支痙攣
腹痛・下痢・吐き気・
アナフィラキシーショック・
肺炎・慢性腎不全
主な注意点 慢性呼吸器疾患をもつ場合は、
気管支痙攣の起こる恐れがあるため、
医師に相談すること。
慢性呼吸器疾患の薬を併用する場合は、
ザナミビル水和物の前に使用すること。
10歳以上の未成年での使用は、
原則として差し控えること。
高度の腎機能障害をもつ場合は、
腎機能低下の恐れがあるため、
医師に相談すること。
感染予防に
用いる場合
感染者に接触してから1.5日以内に
使用を開始すること。
感染者に接触してから
2日以内に使用を開始すること。
 抗インフルエンザウイルス薬を感染予防に用いる場合もありますが、保険適用外であり、ワクチンによる予防接種に置き換わるものではありません。さらに、使用し続けなければ予防効果の持続は期待できません。
 また、抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は十分には明らかにされていませんが、小児や未成年者の使用後に異常行動がみられたとの報告もあります。そのため、小児や未成年者の使用後には一人にさせないなど、患者さんの行動に注意する必要があります。そのほか、乳幼児や妊産婦、妊娠している可能性のある場合は、受診時に医師に相談しましょう。また、抗インフルエンザウイルス薬を使用している期間は、授乳を避ける必要があります。
 体調がよくなったからといって自己判断で薬の使用を中止すると、症状の悪化を招く恐れもあります。医師の指示通りに使用することが大切です。
※1 ノイラミニダーゼ・・・ウイルスの増殖に関与する物質。
※2 アナフィラキシーショック・・・アレルギーの原因となる物質が体内に入って、呼吸困難や血圧低下などのショック症状が現れた状態。重症になると死亡する場合もある。

日常生活における感染予防法
 まずは、感染予防が重要です。日常生活において次の点に気をつけて、感染予防を心掛けましょう。

◆外出先から帰ったら手洗い・うがいを
 外出先から帰ったら、手洗いやうがいを行いましょう。石鹸を使用し、指の間や手首などに洗い残しのないよう、念入りに手を洗いましょう。消毒用アルコールの使用も有効です。

◆人込みをなるべく避けて
 人込みをなるべく避けましょう。やむをえず、人込みに入る場合には、不織布製の使い捨てマスクを着用しましょう。また、マスクの着用だけではウイルスを完全に防ぐことはできないため、ほかの感染予防法も継続して行いましょう。

自分や家族が感染したら
 新型インフルエンザに感染した場合、原則として重症の患者さん以外は自宅療養をすることになります。自分や同居している家族が感染したら、次の点に注意して感染拡大を防ぎましょう。

◆できるだけ外出を控えて
 できるだけ外出を控えて自宅で安静に療養しましょう。療養中は、十分に水分補給をすることが大切です。熱が下がったとしても、感染力は残っている場合もあります。熱が下がってから少なくとも2日以上経過するまで、また発熱や咳などの症状が現れた翌日から少なくとも7日以上経過するまでは、外出するのを控えましょう。

◆くしゃみや咳をする時にはエチケットを守って
 やむをえず外出する場合には、不織布製の使い捨てマスクを必ず着用しましょう。くしゃみや咳をする時は、周囲の人から顔をそむけて1メートル以上離れ、ティッシュなどで口や鼻を覆いましょう(これを咳エチケットといいます)。使用したティッシュは、すぐにふた付きのごみ箱に捨て、手をよく洗いましょう。

◆看護をする際にも感染予防を
 患者さんの看護はできるだけ個室で行い、同居している家族が感染するのを防ぎましょう。看護をする際には不織布製の使い捨てマスクを着用し、手洗いやうがいを心掛けましょう。また、看護をする側も毎日検温し、体調管理を行うことが大切です。

注意:
上記の内容は、すべて2009年9月30日現在の情報をもとに作成しております。最新情報は、下記の情報サイトなどで必ずご確認ください。
厚生労働省の情報サイト:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
新型インフルエンザの情報サイト:
http://influenza.jp/newflu/index.html

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